別府の名物グルメといえば、とり天、冷麺、地獄蒸しという感じでしょうか。もちろん、初めての別府であるならば、ぜひそれを食べていただきたい。けれども今、別府でわたしがおすすめするのはスパイス料理です。別府でわざわざどうしてなんて思うかもしれませんが、これがホームの福岡に帰ってもすぐに、ああ、あのスパイス料理をまた味わいに別府に行きたいと恋しくなるぐらいの不思議な魔力を持っているのです。
ただ、今回おすすめするスパイス料理店はどちらも待ち時間がけっこうあります。別府でのんびり過ごしたいなど時間があるときに選んで欲しいです。
提供されるスパイス料理は、「TANE」の方は南インドのミールス、「Norary-Crary」の方は北インドのターリー。名前は違いますがどちらも複数のスパイス料理を副菜と混ぜながら食べる大皿料理です。ミールスはあっさりしたものが多く、ターリーは濃厚でまろやかなものが多いと言われています。確かに食べ比べるとそんな感触を受けました。どちらも、混ぜ方や食べる順番で味が変化し、何度食べてもまた色んな食べ方を楽しみたくなる不思議な魔力があります。
ちなみに、「Norary-Crary」さんは、うちはカレー屋ではない、スパイス料理店だと言い切っておられますので、タイトルにはおすすめ別府カレーと書いていますが、本文ではスパイス料理と言い方を変えています。確かに日本カレーをイメージして入店して欲しくはないよねと思います。
「TANE」 11:30-17:00 定休日 インスタで要確認
別府駅より歩いて5分。北部旅館街入口。
12時までの早い時間だと席の予約もできます。それ以降は直接お店に並ぶか、もしくは、並んでいるところに「空いたら電話さしあげましょうか。」というお店の方からの声かけられ待ちになります。イベントへ出店していて休業も多いイメージです。必ずインスタで営業しているかどうかを確認しましょう。
南インドの「ミールス」をベースに、素材を大切にした身体に滋養のある料理を目指してあります。店内はおしゃれだけれども、おしゃれ過ぎて落ち着かないということもなく、癒され空間の中での食事です。素敵な店内にいて心がほんわり解けていく、異国の曲を聴いて癒され、スパイスに身体が浄化されるという体験を味わえます。
1枚目の写真はベジミール。2枚目のパパダムを砕いてご飯にふりかけている写真の方はラムカリーを追加しているので1品多くなっています。ラムカリーを追加するとプラス350円しますがラムがごろごろ入っているので、この値段が高いとは思いませんでした。
わたしはスパイスに詳しいわけではないので、あれこれ説明することはできませんが、食べるのに夢中になってしまいます。なぜなら、野菜は素材の味が引き出されていて単品で食べても美味しいのに、さらに少しずつ混ぜながら好みのバランスで食べられることでさらに美味しくなるからです。
サンバルとご飯はお代わり自由なため、若者男子3人組がモリモリお代わりしてました。どうも、知り合いか常連さんのようで、お店の方もニコニコとお代わりに対応していました。良い風景だ。
入店すると、初めて来たかどうかを聞かれ、初めて来たと伝えると、ミールスの説明をとても丁寧にしていただけるので、ミールス初心者の方にもおすすめです。
「Norary-Crary」11:00~23:00(17:00~23:00は要予約)不定休
別府より徒歩8分。竹瓦温泉前。
とても注文の多い料理店です。HPより拝借してきましたが次のように書いてあります。
入店に際してのご注意
必ず読んでご理解の上でご利用ください
当店は万人受けしません、クセのある料理がメインです
下記に2つ以上該当した場合は、お互いのためご利用を考え直してください
当店は注文の多い北インド料理店ですからどうかそこはご承知ください
①辛いものが苦手
②パクチーやマトンが苦手
③時間に余裕がない
④財布に余裕がない
⑤心に余裕がない
※ 入店後黙って座っていても何も出てきません、カウンターでオーダーしてください
※ 通常営業時間は11:00~17:00です
※ 営業時間外の予約はお電話で受け付けています
※ 電話番号は非公開ですが必要な方にはショップカードをお渡ししています
※ 営業時間外に入ってきて「やってますか?」と質問する方へ回答「とっととお帰りください」
※ 営業時間内に入ってきて「やってますか?」と質問する方へ回答「やってるから開けてる」
※ 当店は「北インド料理店」です、「カレー」は作っていません
※ 「カレー」をオーダーした無礼者はお帰り頂いております
※ 「ルーだけください」とオーダーした無礼者はお帰り頂いております
※ 「ルー」とは小麦粉をバターなどで炒めたものです、インド料理では使用しません
※ 「辛いですか?」と質問されますが、貴方がどの程度を辛く感じるとか知らんがな
※ 「ごはん少な目」とか「大盛りで」とかメニューに無いオーダーなど知らんがな
※ なるべく予約していただけると非常に嬉しい(当日予約は承っておりません)
※ 予約が無い場合4名以上の団体はお帰り頂いております
※ 「どのくらい時間かかります?」と質問する無礼者はお帰り頂いております
※ よくドリンクのオーダーを失念します、怪しいなと感じたときは催促してくれるとありがたし
最初この文章を読んだとき、ぎょっとしたのも事実ですが今ならわかります。本気で美味しいものを作っているのでこんな質問に答えてる時間なんかないんですよね。副菜の野菜もなんと注文を受けてから切っているというこだわりよう。事前に切っておくとフレッシュさがなくなるとおっしゃってありました。注文を受けてから野菜を切っていたらそりゃ時間がかかります。「どのくらい時間かかります?」と質問する人がいたなら「無礼者!」とわたしも思ってしまいそうです。
ちなみに今回予約をしていたのですが、席に着いてから30分は待っています。最高のクオリティのターリーを作るのを邪魔しないよう静かに待っていました。
そんな注文の多い料理店ですが、時間のありそうなときにお話ししてみると、店主さん、細やかな心遣いのできる優しい方です。そんな人じゃなきゃ、こんな複雑にして美しいターリーなんか作れません。
立地が竹瓦温泉という有名な温泉の前なので、お風呂に入る前にすぐ出てきそうなカレーでもちょい食べしようというお客さんが来てミスマッチしないようにという配慮をされたのでしょう。
実際、「TANE」さんの方で見かけたのですが、食べに来ていた4人家族のうち3人は完食していたのですが、娘さんひとりはほとんど手を付けず持ち帰りにして詰めてもらっていました。子どもの味覚は敏感ですからね。もう少し成長すると、この美味しさが分かってさらに人生が楽しくなるんだろうな。
以前に行ったときには、ターリーと注文するとセットにした定食が出てきていたのですが、4月になって5種類のうちから3種類選択する形に変わっていました。お客さんの満足度をさらに高めるために試行錯誤をされてあるようです。試行錯誤中なのでまた次回行ったときには変更があるのかもしれません。
事前対策がなかったのでその場でちょっと動揺し、マトン、ひよこ豆、スーパーリッチというキーワードで2、4、5と決めたのですがわたしにはちょっと辛すぎました。でも複雑な美味しさは変わらないので水を飲みつつ完食です。次回は辛さにも注目してメニューを決めさらに楽しみたいと決意を新たにしています。でも、この説明書き、店主の遊び心も感じられるしインド料理の知識も得られるし、今読んでも、また食べたいとの記憶が蘇ってきます。
野菜の味が引き出され複雑な味がするんですが、それと同時にフレッシュさを感じます。ごちゃまぜにしても美しいその色彩。そして、まるで体の中から綺麗になり整うような感覚を味わえる。それが、このスパイス料理の魅力です。最初は入るのに躊躇したのですが、思い切って入ると恐ろしくクオリティの高いスパイス料理に出会い満足しました。
「TANE」さんは、現地で学んだスパイス使いを意識しながらも、旬の素材の美味しさを生かせるように調理し、自分たちのフィルターを通してインド料理を表現していると伝えています。「Norary-Crary」さんは、注文を受けてから野菜を切るなどこだわってありますが「実はインドでは生野菜はほとんど食べない」というようなことをおっしゃっていました。どちらの店もインドという枠に収まらずスパイス料理を発信しようと挑戦し続けています。わたしにとって、これからも通い続けたい2店舗です。